今日の気づき

　そうこうするうちに、天ぷら油の廃油からディーゼルエンジンの燃料に再生出来ることを知り、再生事業に乗り出したそうです。天ぷら油から再生した油は、軽油と性能的には問題なく、ＣＯ2排出量が少なくなるという効果があります。ただ廃油をどう集めるか、再生した油をどこに売るかというのが課題だったのですが、回収は石油などを配達した時にその家庭から回収することで回収の手間とコストを最小限にしたそうです。売り先はまず環境に関心のある福祉関係の施設向けに売り込み、狙い通り福祉車両の燃料に採用、つぎに地元の電機メーカーで、工場が使用するトラックの燃料として利用し、おまけに社員食堂からでる天ぷら廃油を原料として協力してもらえることとなったそうです。

　面白いのは、軽油より4円ほど高い価格への対策として、この燃料を入れた車やトラックように、「エコ燃料でこの車は走っています。」といったステッカーをサービスし、アピールしたことです。

　更に大口の顧客として、クロネコヤマトの地元営業所がこの燃料を採用してくれることになったのですが、原料の廃油の回収がネックになりました。その問題を解決してくれたのは、なんとお客様のクロネコヤマト。宅配で荷物を届ける一方で、廃油の回収を行うことに。これには「あられ菓子」製造メーカーも直ぐに協力。菓子メーカーは廃油処理に困っていた。クロネコヤマトは毎日荷物の集配でこの菓子メーカーを訪れる。と理想的な展開が生まれるなど、小さく始まった天ぷら油のリサイクルは地元を巻き込んだ事業に発展しました。
　この専務は、リサイクル燃料が主で、通常のガソリンや軽油は「そういえば、売っていたよね」というガソリンスタンドを目指し、このようなガソリンスタンドを全国に増やしたいというのが夢。

　この専務曰く、ここ滋賀県は近江商人発祥の地、近江商人の言葉に「三方よし」という言葉がある。売り手よし、買い手よし、世間よしの三方が旨くいくようにするのが商売の極意とのこと。

　今回のガソリンスタンドの環境への取り組みは、まさに売り手（ガソリンスタンド）にとってはお客様を増やすことにつながり、買い手（お客様）にとっては燃料を買うだけでなくＣＯ2削減に貢献できる、そして世間には家庭や事業所から出るゴミを資源としてよみがえらせるという循環を作ることで大きな貢献をしていますし、地域の絆をも強めているように思います。

　日本のビジネスの原点にこの「三方よし」という考えがあったことに、正直驚きました。最近よく言われるWin-Win関係だけでなくそのことが社会にも喜びをもたらすという考え方は、まさにＣＳＲ経営の原点、本質のように感じました。

　どうもひところのアメリカ型の合理主義的経営論が人をどこかに忘れさせるような面があり、むしろ日本的経営論は自分だけでなく相手や世間にも配慮するという、非常に成熟した考え方になっているのではないでしょうか。つまり「人を大切にした経営」と言うことができるようにも思います。今求められているのは「三方よし」のビジネスそのものではないでしょうか。もしかしたら21世紀は日本の時代なのかも知れないですね。

参考：三方よし

http://www.shigaplaza.or.jp/sanpou/ethos/ethos.html